城谷がまだ小学生のころ。北海道には珍しく激しい雨が朝から降り続く嵐の晩、家の向かいの道路で大きな衝撃音が轟いた。慌てて駆け寄った窓を開けて外を見るとあらぬ方向に向いた何台もの車、沿道に群がる大勢の人、そして近くの横断歩道に転がった真っ赤な女性ものの傘。人身事故だった。
明朝、嘘のように晴れた通学路には、まだ昨夜の雨が水たまりをあちこちに残していたが、現場傍らの電柱の根元、その水たまりは真黒で表面に油が浮いていた。血であった。聞けば被害者の女性は助からなかったという。子供心にも重く悲しい気持ちになったのだが……事態は一週間後の雨の晩に急展開を迎えることになった。打ち付ける激しい雨音を聞きながら、一人自室にこもって絵を描いていると。
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