読み聞かせでもなく、サウンドドラマでもない圧倒的な表現力。誰もが知っている”はず”のシェイクスピア作品をダイジェストにして続々お届け。
その昔、海に浮かぶとある島。プロスペロという初老の男と、うら若きその娘ミランダが住んでいた。住人と言えばこの二人だけのこの島に、娘が連れて来られたのはまだ年端も行かぬ頃、故にこの娘は、生まれてこの方父親以外の人間と顔も合わせた覚えがない。
さて、親娘は岩をくり抜いた岩穴とも岩屋ともつかぬところに住んでいたが、プロスペロは幾つかの小部屋に仕切られたこの住まいの内の一つを書斎と呼んで、当時学者らにあまねく親しまれた学問、すなわち魔術を主に扱った書物を収めていた。この魔術の心得、結果大いに男の身を助けたが、それというのも、親娘が運命のいたずらにより打ち上げられたこの島は、その直前に死んだシコラックスという名の魔女のまじないにかけられたままになっており、その邪悪な命に背いた多くの精霊たちが、大木の幹に封じ込められていた。プロスペロは、これら数多の良き精霊たちを、術の力で解き放ってやったのだ。かくして島の精霊共は、これより先プロスペロに仕えることに。
これら力のある精霊を従え意のまま操って、今や風に海の波までもが、プロスペロの思い通りに。あるとき命を受け、精霊たちは激しい嵐を喚び起こす。荒れ狂う波に揉まれ、今にも海に呑まれそうな一艘の大きな船。男はこれを娘に示し、あれには自分たちと同じような生き物がたくさん乗っていると告げる・・・。
(1)プロローグ:嵐と海難
(2)エアリエル
(3)父の企み
(4)愛
(5)再会