M先生は思いもよらずあとからあとから湧いてくるような不思議な話の数珠つなぎに、まるで記者にでもなったかのように取材を繰り返すようになり、城谷に話を送ろうと集めたエピソードをまとめ上げた。ところがいざまとめた話を読み返していくとどうも思ったほどに恐ろしくなかった。何度も推敲を試みたが、結局納得がいかずにせっかくまとめた話を送ることを断念してしまった。それからおよそ半年が過ぎた昨年の春休み、それまで怪体験を聞きはしても自分に起きることはないと思っていたM先生の元に、ついに向こうの世界のナニかが存在を示すことになる。M先生の送ろうと思って断念していたこの学校の怪は、つまり前の段階ではまだ不十分……。Mさん自身の体験をしてようやく一つのエピソードにまとまることになってしまったのである。