この「心の故郷 日本の民謡」シリーズの監修者である、故藤尾隆造氏は民謡という言葉の始まりと画期について次のように述べています。「民謡は民衆の心が時と共にひらけ、生活に文化がとけ込み発展してきたが、その昔は、民謡という言葉をもって呼ばれていなかった。光格天皇(1771−1840)の頃、儒者の赤松赤誠という人が『民謡は民の謡なり、俚唄を広めていうなり、小唄は今の三絃の唄となれり、されば小唄のうちにも民謡あり、然し民謡は本来三絃の唄にあらず』と門人に説いている。このように言葉としてかたまったことは確かに近代民謡感の画期といって良いわけで、私はここを境に以前を古民謡期、以後を近代民謡期とし、さらに明治大正より現代民謡期と移るのであると考えいる。」従って本シリーズに収録されているものは現代民謡期の民謡ということになるが、古民謡期の頃から語り継がれている節回しや詩も少なくありません。当時の情景や文化をイメージしながら鑑賞下さい。藤尾氏の解説で本アルバムの収録曲をひとつ紹介します。
津軽小原節:津軽を代表する三大節の一つである津軽小原節は、眞擬のほどは定かでないが、昭和九年頃、鹿児島小原節が大そうはやり、それにあやかろうと津軽塩釜甚句を改名してしまったといわれている。本唄である塩釜甚句はとても短い唄であった。塩釜といっても宮城県の塩釜ではなく東津軽郡野内村あたりの塩田のことであり、海浜で塩を作る時の作業唄であった。この地方には唄の上手な人々がおおぜいおり「津軽小原節」の原型を作っていった。それを競って創意を加え、今のような長い口説き物に仕上げていった。この唄には地方に唄う旧節、中節、新節と種類があり歌詞により唄の節回しも変わる。
本アルバムの収録曲は以下の17曲。
1. 津軽小原節(旧節)
2. 津軽小原節(中節)
3. 津軽小原節(新節)
4. 津軽山唄(西通り一)
5. 津軽山唄(西通り二)
6. 深浦音頭
7. 津軽道中馬方節
8. 鯵ヶ沢甚句
9. 津軽三下り
10. 津軽タント節(一)
11. 津軽タント節(二)
12. 弥三郎節
13. 津軽甚句(ドダレバチ)
14. 津軽ばやし
15. 津軽数え唄
16. 外ヶ浜音頭
17. 黒石甚句
このアルバムはApple Musicでも聴くことができます。
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