民謡とは日本各地の生活や風俗の中で誰うたうともなく唄い出し、口から口へ伝承され、時の移ろいと共に洗練され自然に広まった経路があります。その背景には郷土生活での作業、労働に拍子をつけ、楽しさ、美しさを高め、心を動かす自然の曲律があります。いわば郷土に生まれた日本人の心の故郷がここにあると言えます。この貴重な文化を残すべく故藤尾隆造氏が全国を巡り監修したのが本シリーズ「心の故郷 日本の民謡」です。本作品に収められている幾つかを藤尾氏の解説で紹介します。
吾野機織唄:飯野地方の機織り唄を、小沢千月氏が補作し、「吾野」の字句を入れ、「吾野の機織り唄」となり、広く愛唱されている。飯野地方の機織りは出機という家での賃機が多かったため、年季奉公の女工さんのような、極つらい思いはしなかった。唄の調子にもそれが現れている。
川口たたら節:埼玉県川口市は全国的にも有名な鋳物の産地。「たたら」とは鋳物鉄を溶解するとき、その火力をおこす吹子の別名である。この唄は鋳物町川口一帯で唄われた労働歌である。江戸時代「たたら」は8人がかりで、板を足で踏みおりし炭をおこすのだが大変力のいる仕事だったと言われる。作業にはこの唄をうたって熱さと苦労をなぐさめめたのである。明治末期にはたたらが姿を消すとともにこの唄も聞かれなくなってしまった。時代が移り変わっていく中で地元の民謡会が伝承していることは何とも嬉しいことである。
収録曲
1. 江戸川土端打唄
2. 吾野機織唄
3. 川越舟歌
4. 埼玉餅つき唄
5. 飯能木挽唄
6. 入西口説
7. 秩父馬子唄
8. 飯能麦打唄
9. 埼玉臼ひき唄
10. 元唄名栗川筏唄
11. ならしのざんざ節
12. 名栗川筏流し唄
13. 川口たたら節
14. 平野麦打唄
15. 大滝節
16. 秩父ざんざ節
17. 武州紅花
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