民謡とは日本各地の生活や風俗の中で誰うたうともなく唄い出し、口から口へ伝承され、時の移ろいと共に洗練され自然に広まった経路があります。その背景には郷土生活での作業、労働に拍子をつけ、楽しさ、美しさを高め、心を動かす自然の曲律があります。いわば郷土に生まれた日本人の心の故郷がここにあると言えます。この貴重な文化を残すべく故藤尾隆造氏が全国を巡り監修したのが本シリーズ「心の故郷 日本の民謡」です。本作品に収められている幾つかを藤尾氏の解説で紹介します。
津軽あいや節:アイヤと名のつく唄の大部分は九州のハイヤ節が元祖とされる。しかし、津軽あいや節に限ってはそうではなく異質な唄と言えるだろう。民謡では珍しい三拍子の唄であり、それが津軽にあることが意外である。考えられるのは、その昔、朝鮮半島から三拍子系の歌が伝わりこの調子が潜在的にあったのでなかろうか。また、アイヌや樺太のギリヤークの唄にも三拍子系のものがある。歯切れが悪い唄なので門付けには向かないが、舞台芸として踊りのついたあいや節はなんとも情緒あるもので津軽の五大節には欠かせない代表的な曲である。
津軽木挽唄:木挽きは、元来樵(きこり)が倒した木を板に挽くのが本業である。大きな鋸でシャリコン、シャリコンとリズミカルに弾くのはいかにも呑気そうである。ところが実は大変な労働であり、木挽きたちの心境としては、自嘲したり、自慰的に唄っているのに違いない。木挽唄は諸国をわたりあるく「渡り木挽木」たちにより行く先々で唄われたので全国各地で同じような唄が多いようである。
収録曲
1. 津軽あいや節(一)
2. 津軽あいや節(二)
3. 津軽あいや節(三)
4. 津軽あいや節(字余り)(四)
5. 津軽山唄(東通り一)
6. 津軽山唄(東通り二)
7. 津軽願人節
8. 津軽盆唄
9. 津軽木挽唄
10. 津軽よされ節(一)
11. 津軽よされ節(二)
12. 津軽よされ節(三)
13. りんご節
14. ホーハイ節
15. 嘉瀬の奴踊り
16. 津軽音頭
17. 五所川原甚句
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