「同居人」(21分) 仮にルナさんとしよう。まだ二十代の若い女性である。彼女は小さいころ両親と三歳年下の妹の家族四人で宮崎県の貸家住まいだった。五歳のころ夜中によくトイレに行きたくなって目が覚めた。トイレは寝室から廊下を挟んですぐ斜め向かいにあるけれど、どうしても一人で行きたくない。横で寝ている父親を都度起こすのだが、ついてきてはくれなかった。仕方なく寝室の入口を開け、トイレのドアも少し開けて寝室の家族に声をかけながら用を足すのだが、ただの怖がりという理由ではない。誰しも想像するような恐ろしいことが現実に起こることが度々あったのだ。廊下の暗がりから生きてはいない女が床を這いずって近づいてくるという怪異が。