紫さんという女性の体験談。会社員の紫さんはその日も朝早く仕事に向かうため電車に飛び乗った。
通勤ラッシュでぎゅうぎゅうの混雑ぶりは、電車から降りた駅の構内も同じことだった。それでも毎朝のことで慣れっこの彼女は大勢の人波に乗って地下階へ降りる階段を目指していた。(眠いなぁ……)とぼんやりしていると行く手の階段の様子がおかしい。上り下りでいつもなら隙間なく混んでいる階段、中央部分がスカスカで人波が外側に膨らんでいる。どうやらリュックを背負ったTシャツの男がゆっくり地下階へ向かっており、その人物を避けているためのようだった。