講談師の旭堂南湖が贈る古典怪談。故きを温ねて新しきを知る。名調子で語る「日本の怪談」ここにあり。
「円山応挙の幽霊画」(27分)
円山応挙は江戸時代に活躍した絵師。国宝「雪松図屏風」や重要文化財「藤花図」が有名だが、特に人気があるのが幽霊画。現在でも、応挙の幽霊画は美術館や寺院などに残されている。幽霊の絵というものは、一見気味が悪いように感じるものなのだが、ではなぜ応挙が幽霊画を描き始めたのか。それは、一人の花魁との出会いがきっかけであった。当時、長崎に丸山という遊里があり、そこを訪れた応挙が出会ったのが、病気でやせ衰えた花魁・紫だった。紫の絵を描いた応挙は、彼女が大事にしていた唐錦の小布を受け取るのだが…。 怪談でありながら、人情噺でもある一席。
「草加の生首婆」(22分)
草加せんべいでも有名な埼玉県草加市。昭和三十年代、ここに老婆の幽霊が出るという噂が立った。この老婆、首から下がない「生首」。口は焼けただれ、ダラダラダラと血を流している。そんな老婆の生首がフワリフワリと空中をさまよっていた。こういう目撃談があったそうだ。実は、講談の中に、その原因となった事件が描かれていた。話は江戸時代。兄を殺された侠客が大暴れ。刀を一振りすれば、血しぶきが飛ぶ、生首が転がる。草加宿に血の雨が降ったという。血湧き肉躍る講談。
「真景累ヶ淵 宗悦殺し」(19分)
近世落語界の名人、三遊亭円朝。この円朝が作ったのが「真景累ヶ淵」というお話。江戸時代、幽霊の存在を信じている庶民は多くいたのだが、時代が明治へと移り変わると、幽霊など迷信であり科学的ではない。気の迷い、神経の作用で見るものだという風潮に変わっていく。円朝の「真景」はこの神経をもじっている。また、金貸しが殺される話でもあり。「真景累ヶ淵」は「金銭貸さぬが無事」のシャレ言葉になっている。「真景累ヶ淵」という長いお話の中より、発端の「宗悦殺し」の一席。全てはここから始まった。本格怪談。
「江島屋騒動」(22分)
こちらも近世落語界の名人、三遊亭円朝作の一席。江戸時代、古着屋で江島屋治右衛門という男がいた。誠に強欲な人間で、相手が田舎者とわかるや「イカモノ」を売りつけ不当の利益を得ていた。ちなみに「イカモノ」というのは、紙のようにもろくなっている衣装のことである。一見すると、新品同様だが、実際はボロボロの衣装。この江島屋の蔵に婚礼の衣装を身に着けた若い女性の幽霊が現れる。なぜ現れたのかと言えば…。「江島屋騒動」という長いお話をわかりやすくまとめた一席。本格怪談。
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